劇団イノコリのお芝居は過去に何度か見ている。私が一番最初に「小さなお芝居でも楽しいものもあるんだな」と思ったのは彼らの「隣の食卓は美味しくない」という作品だった。今回はそんなイノコリの五周年記念イベントということらしい。

「さよならのスピカ」、「再懐」の二作品。チケットは前売りで買って1800円。

戦後間もない日本の家族物語。

総じて、安定のイノコリクオリティだと感じた。今回のは一般人にウケるテイストの普通のエンターテイメントで、私としては大変ありがたい。役者が気にならず、ちゃんとお話を見ることができた。これはイノコリ作品を含めても自分至上初めて。

一作目は私好みの少し不思議な物語。ああいうファンタジーな世界観は好きだ。ただ、大きくなくていいからもうちょっと距離のある劇場だったらよかったのにと思った。お上手だったしきれいだったけど、あの至近距離で突然歌とか歌われたら、正直、引く。目が覚めてしまう。

二作目を見て、ああバランスのとれた二作だなあと思った。暖かい夫婦が素敵で、ALWAYSの鈴木オートを思い出す。十分楽しくて満足なんだが、見たい要素が少しばらついてて散漫だった印象がある。

普通の人だったら気づかないかもしれないストーリーの解釈やつながりを、ちゃんと分かってる人に教えてもらって「おおー」と思ったことが幾つかあった。私は映画なんかでもこういうのは鈍い方だが、舞台は二回見ることができないので、いっそうもどかしい。

気に入らなかったのは客席があまり快適でなかったこと。こういう規模の公演はいつだって別に快適ではないが、今回のはとりわけ窮屈でケツが硬く、そろそろ作品から注意が削がれかねないレベル。

何はともあれ、おかげさまで会社のハロウィンパーティーから逃げ出した金曜の夜に良い一時間半を過ごすことができた。次の公演も楽しみにしています。