プロローグ:REXXAM FORTE 100 Link to heading

学生時代最後の冬、地元札幌で最初で最後のスキーバイトをすることになったのだが、確か研修初日の直前にそれまで使っていたブーツが壊れたかなんかで母と一緒に電車に乗って石井スポーツまで行って買ってもらったのがこのREXXAM FORTE 100だった。前任は中学生の頃から履いていたSalomonの安価なブーツだった。

このREXXAMは私が初めて手にする「トップモデル」なブーツだった。これより前のシーズンに父が青のREXXAMを買っていて、「上村愛子が履いているブランドだ!」という憧れがあり、REXXAM一択くらいの感じで選んだ気がする。当時は「日本ブランドだから日本人の足に一番合っている」的なブランディングもされていたような気もする。

これが親から買ってもらった最後のスキー道具となる。母と二人で雪道を歩いて一緒にお買い物に行くなんてこれが最後かもしれないな、なんてことをチラリとは思った記憶がある。

あれから十数年、このブーツにはいろんなところに連れて行ってもらった。まずは上述のスキーバイトで人生初のインストラクター業を経験した。そして同シーズンにSAJのテクニカルプライズを受験した(不合格だった)。就職で上京してからも、スキーバイトでよくしてくれたCSIA Level 4のスキーヤーに新しいスキーの楽しみ方を教えてもらったり、普通にスキーを教えてもらったりした。首都圏でのスキーは割に合わんと早々に判断し隔週のペースで北海道に通ったりした。ある春のシーズン納めにWhistlerでCSIA Level 2を受験した(不合格だった)。親になった。まだスキーなんてするのかなとも思ったけどアメリカに一緒に来てもらった。いつしかストラップのマジックテープはくっつかなく、バックルのくるくる回して微調整するやつ(名前教えて)は固まって動かなくなっていた。

そしてアメリカに引っ越して六シーズン目の今季、重い腰を上げてあるスキースクールのボランティアに参加した。そこでの研修で私の滑りを見た重鎮先生(PSIA Level 3)に「あんたストラップをちゃんと締めるといいよ」と言われ…たけど上述の通り締まらないのだよ…なんて話をきっかけに、十数年ぶりにブーツを新調することを考え始めた。

そういえばスキー道具で一番に投資すべきはブーツであるとバイト時代からよく聞いていた。一番足に近いところで、自分の力をちゃんとスキーに伝えるのに一番大事、的な。しかしながらなんかお金かかりそうなのでずーっと「まあ、いつかね」と先送りにしておった。今は昔よりずっとお金あるし、スキー以外に趣味ないし、多分もう人生の半分は過ぎたし、そもそも誰だっていつ死ぬかわからないし、お金かけてでもちゃんとやったらどうなるか経験してから死にたいよね、ということで新しくブーツをフィッティングしてもらうことにした。

これはそんな新しい出会いの記録。

ZipFit Link to heading

ZipFitというインナー(英語ではライナーというのだとこの度学んだ)に出会った。お店でブーツを色々履かせてもらっていた時に、隣で見ていたボス的な人が、私がパフォーマンスを求めて来ている(そしてお金を使う気である)ことを感じ取ってくれたようで、後ろから持ち出してきてくれた。なるほど、インナーだけ別で買ったりするんですね。

おお、クッションで誤魔化すのではないちゃんとしたフィット感である。一番感じた新しい(よい)感触は、踵をソールに固定しておいてくれる力である。フィッティングに来る前にイメージしていた「フィットしたブーツ」の感じは脛周りだけだったのだが、なるほど、踵か。

後日、脛の前のスペースを減らせませんかねと改めて相談して、tongueに何かを貼り付けて厚くしてくれた。これの効果は、うーん、僅かにあるという感じ。この問題についてはさらに後述。

Fischer RC4 Link to heading

上述のZipFitがFischerブランドのものだったからか、お店の人が次にFischerのRC4を持ってきてくれた。私の持つFischerのブランドイメージはよい。初めて買ってもらったトップモデルなスキーはFischerだったし、Fischerは私が応援しているYouTuberのデブおばさんのスポンサーだし。そして履いてみたら履き心地文句なしで、すんなりFischer RC4ってことになった。

このお店にはRC4 105(画像一番目)とRC4 120(画像二番目)があった。105の方が色がかわいくて好きなのだが、あれは女性用モデルだと言われ試し履きすらさせてもらえず(こちらも是非にとお願いしたわけではないが)、私としても「そんなもんかねえ」という感じでRC4 120をお買い上げ。

しかしその後、シェルの硬さについて色々調べていて、違う数字のを試したくなった。メルカリでたまたま上位モデル(”Pro”と名のつく140相当。画像三番目)が出品されていたのでお買い上げ。使ってみた感想は、うーん、確かに気持ち120より硬いかも。パフォーマンス的には正直どっちでもいい。多分どっちも硬すぎる。こんなに硬いんじゃ足首グイグイ動かしてドライブしていくのなんて無理ゲーじゃん、って思う。私は体がそんなに重くないしパワーも大してないしね。

というわけで募る柔らかいシェルへの思い…。「まあ試し履きだけして返品するわ」と言い聞かせて105をネットでお買い上げ。おお、微妙な違いではあるけど履いて分かる。少しだけ柔らかい。自分で動かせる。というわけで結局返品せずに今メインで105を使っている。結果論だが、最初から見た目で決めていれば一足で済んだ。女性用モデルって何だ…。足幅とか甲の高さとか変わるのかと興味あったがそんなのも特に感じなかった。

最後にBOAについて。BOA、ちょうど今季からいくつかのメーカーで使われ始めたらしい。使っている私の感想は、「大きな不満はないけど将来どちらか選べと言われたら普通のバックルを選ぶ」。支点が多いがワイヤーは一本なので細かな調整という点においてはバックルに劣ると思う。実際使っていて先っちょだけもうちょっときつくしたいとか思うことある。バックルを締めるよりBOAを締める方が時間がかかる。そして私のスキーパンツの裾の縫い目がBOAのダイヤルによく引っかかる。

Booster Strap Link to heading

ブーツフィッティング、総じて「んー、なんだこんなもんか」と思っている。一番のがっかりポイントは前後の無駄スペースが結局あんまり変わらないこと。足首を動かしたところでそれに対するフィードバックの機敏さはほぼ変わっていないような気がする。バックルを目一杯きつくしても、締め付けられて苦しいだけ。

この問題に対して結局一番有効だったのはBooster Strapだった。ZipFitのtongueを厚くした時に別の店員さんがこれを推していた。

これははっきりと違いを感じる。なるほど、私はこれまで長いことスキーをしてきてブーツのストラップの役割を全くわかっていなかった。なくてもいいと思っていた。Booster Strapは適度な柔軟さのおかげでちゃんときつくできるので、ストラップにこれほどの仕事がお願いできたのだと初めて理解できた。

装着方法はいくつか流派があるみたいだけど、私は公式でお勧めされている通りの、シェルを一枚だけ挟んで締めるのがちょうどよく感じている。インナーだけ挟んでも、それじゃあインナーとシェルの間のスペース埋まらないじゃん。逆にシェル全体をまとめて締めても、それってバックルきつくするのと同じじゃん。

その他 Link to heading

つま先エリアにスペースがあり過ぎるせいか、足が常にがんばって大地を掴もうとして力が入ってしまいしんどかった。これは、ボスフィッターの見解ではスペース云々ではなく、中敷の問題ではないかと。私は整体師の勧めでオーソティクスを使っている。これがペラペラであることでライナー内でしっかり足に土台を提供できてないのがよくないということで、オーソティクスの裏に硬いシートを貼り付けてくれた。正解!この問題はこれで完全に解決した。

おわりに Link to heading

というわけでひとまずZipFit in RC4 105 with Booster Strapで落ち着いた。想像していたよりは小さいことの積み重ねだった印象。滑りの感触は「劇的な変化!」というほどではないけど、前よりは確実によい。

十数年お世話になったREXXAMはメルカリに安く出品したら買い手がついた。どこかでまた楽しいスキー人生を演出してくれたらとても嬉しい。

さあ新しいブーツで君はどこに行くか。とりあえずもっとお上手になりたい。